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【特集】ヒヴァ常設写真展オープン記念:写真家 秋野深氏インタビュー「ウズベキスタンとの縁」(後半)
長年ウズベキスタンの撮影を続け、ウズベキスタンでの写真展開催など精力的にご活躍中の写真家・秋野深氏のインタビュー後半は、2024年4月に世界文化遺産ヒヴァ・イチャンカラのタシュハウリ宮殿にて常設写真展をオープンするまでの秘話、常設展開催での出会い、ウズベキスタン撮影の魅力や今後の活動などについて、たっぷりとお伺いしました。
ヒヴァへご旅行の際は、ぜひイチャンカラ・タシュハウリ宮殿の秋野深常設写真展を訪れてみてはいかがでしょうか。
秋野深氏からのメッセージ全編をお読みいただい後の常設写真展観覧は、より一層作品の深み、作品を通してのウズベキスタンの魅力が感じられるでしょう。
Contents
1.どのようにしてヒヴァでの常設展開催が実現されたのでしょうか?
ヒヴァは城壁に囲まれた個性的な古都で、その独特の雰囲気には初めて訪れた時から惹かれていました。
2009年だったと記憶していますが、偶然地元の写真家の方にヒヴァで約100年前に撮影された古写真を見せていただく機会があり、それがきっかけで2012年に「ウズベキスタンの世界遺産ヒヴァの古写真プロジェクト」を実施しました。
これは、ヒヴァを管理するイチャンカラ博物館と、シルクロードの遺産をデジタル化して保存しようという日本の国立情報学研究所の「ディジタル・シルクロード・プロジェクト」による共同プロジェクトで、私は古写真が撮影された場所を実際に探し、比較写真を撮影していきました。
その後、イチャンカラ博物館からも、「何年にもわたってヒヴァを撮影している写真家は他にはいないので、いずれはぜひ写真展を」という話をいただき、具体的な企画となったのは、2018年頃のことです。
当初の計画では常設展示の開始予定は2020年4月でしたが、世界的なパンデミックが始まり、残念ながら展示は無期限延期となってしまいました。
ようやく展示の話を再開できたのが2023年12月で、展示の開始にこぎつけたのが 2024年4月でした。
― オープニングセレモニーの様子や写真を見られた方の感想など、お聞かせください。
オープニングセレモニーは、観光スポットとしても多くの方が訪れるイチャンカラ・タシュハウリ宮殿で行われました。偶然その場にいた観光客もセレモニーに参加し、オープニングの挨拶の後は、ウズベキスタンらしく踊りと音楽。大勢の方々と、とても盛り上がりました。
会場で偶然お会いした日本人観光客は、「ウズベキスタン西端の世界遺産で、まさかの日本人写真家による写真展の、オープニングセレモニーのような特別な機会に遭遇できてとても驚いた共に、とてもラッキーだった。」と喜んでいらっしゃいました。
― 常設写真展の開催で、特に印象的な出会いがあったそうですね。
アフリカ・スーダン人の歯科医(新潟大学歯学部卒でサウジアラビア在住)の方との出会いで、様々な国籍、バックグラウンドの方々が訪れる世界遺産のような場所で展示をする醍醐味を感じた特に嬉しい出会いでした。
その方は開催初日に写真展をご覧になられていましたが、もう一度見たいと思って、2日目にも訪れてくださったところ、偶然お会いしました。
その方は私の作品の「光と影」の描写に感銘を受けられ、「普通は『影』は脇役になるけど、あなたの作品は『影』をメインにしているのがおもしろい。」と感想をいただきました。
そして、谷崎潤一郎著『陰翳礼讃』(いんえいらいさん)という1933年のエッセイをご紹介いただきました。
それは、日本の生活が西洋化、近代化されていくなかで、本来は影や薄暗さの中に宿っている日本の美的感覚が失われていないかという警鐘を鳴らす内容で、スーダンの方が自分の作品との共通項を見出してエッセイを紹介してくださったのが、とても嬉しく思いました。
もちろん、大勢の方に自分の作品を見ていただけるのもとても嬉しい一方で、一人の方にものすごく響くというのも大切だと考えています。
この展示を通して得た出会い、嬉しさで、今までで一番嬉しい出来事かもしれません。
2.ウズベキスタンでの撮影の魅力は何でしょうか?
世界遺産の建築物やお土産物屋に並ぶ手芸品・工芸品のように、伝統や歴史に裏打ちされた造形や色彩の美しさはひときわ目をひきます。ただ、被写体のジャンルを問わず、切り口次第で多様な文化の中に息づく様々な魅力が発見できるところがウズベキスタンの撮影の醍醐味だと思っています。
また、人々の人懐っこさもあって、旅をする外国人にとって、現地の人々の日常がとても身近に感じられることも大きな魅力ですし、少し都市部から離れると、四季の変化を実感できる大自然に溢れています。私自身も訪れるたびに新たな魅力の発見が続いています。
― ウズベキスタンで撮影するにあたり、特に感じる魅力はありますか?
ウズベキスタンは日差しが強いので、「光と影」を特に強く意識しています。
また、目に入ってくるものがカラフルで複雑な文様のものが多いので、それらに「光と影」が入るとさらに美しさを発します。
表面的な美しさのみではなく、背景にある深い文化が、写真の作品として考える時に楽しい点でもあります。
3.今後の活動をお聞かせください。
ヒヴァでの古写真プロジェクトを通して、ウズベキスタンで最初の写真家と言われるフダイベルゲン・デバノフという人の存在を知りました。
ヒヴァでは偉人のような存在の人物で、イチャンカラ博物館内にも彼の功績を紹介する展示スペースがあります。
実際に彼が撮影した写真に触れ、また数奇な運命をたどった彼の人生(スパイ容疑により1940年にタシケントで銃殺刑、後に無罪が証明され名誉回復)を少しずつ知るにつれて、私自身もウズベキスタン、ヒヴァを撮影して、展示をする機会をいただいた写真家として、彼の写真だけでなく、人物、彼の写真家人生をもっと知りたいと思うようになりました。
写真や映像の黎明期の撮影はどのようなものだったのか、ヒヴァ・ハーン国、ロシア帝国、ソビエト連邦と自分が属する国が短期間で劇的に変わっていったことは写真家としての彼にどんな影響があったのか・・など、興味は尽きません。
どのようにリサーチがしていけるかはまだわかりませんが、今後のウズベキスタンでの自分の活動の大きなトピックの1つにしたいと考えています。
― 日本国内での活動はいかがでしょうか?
日本国内の活動としては、今年から初のウズベキスタン・フォトコンテストが始まっていまして、私は長年ウズベキスタンを撮影してきた写真家として審査委員長を務めます。
ツアー旅行でも個人旅行でも、一昔前よりウズベキスタンを訪れる方は増えてきていると思います。現地での過ごし方、訪れる場所もきっとバリエーションに富んでいることでしょう。
審査を通して、出品者の皆様の個性的な視点が表れた多くの作品に出会えることをとても楽しみにしています。
また、このコンテストがウズベキスタンを訪れたことがない方にとっても、受賞作品を通してウズベキスタンの様々な魅力を知るきっかけの場になってくれたらと期待しています。
4.皆様へメッセージをお願いいたします。
私が初めてウズベキスタンを訪れてから25年ほどが経過していますが、この10年5年の変化のスピードは目を見張るものがあります。
特に外国人の旅行、観光という点では、以前よりもはるかに移動がしやすく、現地での様々なサービスの選択肢も増えていると言えるでしょう。
さらに、以前は得られる情報が限られていましたが、今は情報発信も数多くされており、ツアー旅行、個人旅行の選択肢も増えてきました。
伝統的な建築物、民族色豊かな手芸品、工芸品、料理、自然、生活文化・・・とにかく様々な見どころに溢れていますので、ご自身の興味に応じて魅力をさらに掘り下げられる旅行先です。
ぜひご自身なりの”ウズベキスタンの魅力”を発見して大いに旅を楽しんでいただきたいと思います。
たくさんの大変貴重なお話を、ありがとうございました。
写真家・秋野深 Website
https://www.jinakino.com/
ウズベキスタン・フォトコンテスト
https://uzbekistan-photo.com/
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